古くからある歯医者さん

昔、通っていた歯医者のことだ。
二十歳を超えて、親知らずが生えてきた私。
生えてきた当初は「おぉ…これが親知らずか」と感動するのみだったが、次第に弊害が出てきた。
親知らずが虫歯になったのだ。
痛みこそないものの、時折ポロリと虫歯化した歯の欠片が零れ落ちるように。
これはマズい…と思った私は、仕事を早めに切り上げて急ぎ歯医者へ行った。
歯医者はずっと行ってなかったので、どこに行こうかと考えていて思いついたのが、私が子供のころからある近所の歯医者さんだった。
この歯医者を選んだ理由というは、単に昔からなんとなく知っている近所にある歯医者さんだったというだけでした。もしかしたら子供の時に通ったことがあるかもしれない。
中に入ると設備は古いし、歯医者の先生はおじいちゃんだし。
「うう、失敗したかな? 」
と後悔しながら待っていると、間もなく私の番に。
受付で「親知らずを抜いてほしいんです」と伝えていたので、診察台に上がってからの処置はスムーズだった。
すぐにレントゲンが準備され、その後実際に口の中を見て診断。案の定親知らずが虫歯になっていたため、麻酔を打たれて処置に入った。
その作業の早いこと早いこと。
あっと言う間に親知らずが抜けてしまった。
抜けた親知らずを口から出す時間のほうが長かったくらいだ。
なるほど、待合室で待っているときも人がそれなりに多いな、とは感じていたが、これだけ腕が良ければそりゃあ人気になるだろう。
古臭い歯医者だと思ってごめんなさい。
内心で謝り、私は次に歯医者にかかるときもここに来よう、と思ったのだった。